札幌高等裁判所 昭和37年(ネ)206号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件登記の登記原因として「昭和三二年六月二〇日付金銭消費賃借、金額一二万円」と記載されているのが事実に即応しないことは、右判示したところから明らかであり、それは控訴人の自陳するところでもある。登記面上には、また、年三割六分の違約損害金の約定が記載されているが、このような約定がなされたと認めるに足りる証拠はないから、これも事実に即応しない。しかし、弁済期を昭和三三年三月三一日とする記載については、弁論の全趣旨に徴し、被控訴人らはこれを明らかに争わぬものと認められるから、これを自白したものとみなすべきである。
右のように考察して来ると、本件登記の登記原因として記載されたところは、申請上の錯誤に基き真実の権利関係に合致しない部分とそうでない部分とがあることが明らかであり、申請当時において正しく登記原因が記載されたとすれば「昭和三三年二月一〇日附準消費貸借、債権額金九万円、弁済期同年同月三一日」となるべきであつたことになる。
そこで、本件抵当権登記抹消登記手続の請求について考えるに、記載された登記原因中真実の権利関係に合致しない部分があるからといつて、直ちに抵当権登記を抹消すべきものではなく、その登記によつて真実の権利関係すなわち被担保債権が保護されるべき限度においてその抵当権登記の有効性を維持するのが相当であり、これは錯誤を原因として更正登記の手続をすることによつて達せられることである。そして、被控訴人らの抵当権登記抹消登記手続の請求は、弁論の全趣旨に鑑み、その質的一部としてこのような更正登記手続の請求をも包含するものと解され、このような本来の申立の質的一部をなす請求については、附帯控訴を以てする新規の申立も必要でないから、本件においては被控訴人らの請求の一部認容として、右の更正登記手続の請求を認容し、その余を棄却すべきである。(伊藤淳吉 臼居直道 倉田卓次)